サヨナラも言わずに

もう……


会えない……


せっかくカレカノになれたのに……



「これ、美琴があんたにって」



母さんはそう言いながら、可愛らしいレース柄の封筒を渡してくれた。



俺はそれをゆっくりと開き、読んでいった。



『黒瀬へ


嘘ついて、ごめん。

黙っていなくなって、ごめん。


本当はなにも言わないでいなくなろうって、思ってた。

でも、昔、黒瀬になにも言われなかったのを思い出して、無言の別れは辛いな、と思って手紙にした。

直接は、無理で……

ホントにごめん。


黒瀬と過ごした二日?くらいは、楽しかった。

これは、嘘じゃない。


また家族ぐるみでワイワイ出来たらな、って思う。

いつか、ね。


どこに引っ越したかは、言えないけど……

本当にごめんなさい。


ありがとう。

美琴』



……なんだよ、これ……


美琴、謝ってばっかじゃん。


美琴が謝ることなんて、なに一つないのに。
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