ファインダー越しの瀬川くん
「ちょっと待って」

凛とした声に顔を上げて見れば、瀬川の真剣な瞳とぶつかった。

「あんなにうまく撮れてるのに、消しちゃうなんてもったいないよ」

いつもとは違う、ファインダー越しではない瀬川が、真っ直ぐにこちらを見つめている。
その真剣な瞳が不意にふにゃっと緩んで、カメラを覆っていた手が離れていく。

「せっかくだから、もっと見せて」

そう言って隣の席にすとんと腰をおろした瀬川が、ぽんぽんと椅子を叩く。
その仕草に促されるままゆっくりと椅子に腰を下ろすと、おずおずとカメラを操作して撮った写真を呼び出す。
最初に撮った、ボールを追いかけて走る一枚を表示すると、カメラごとぐいっと瀬川に突き出した。

「すごーい、これ走ってた時のやつでしょ?」

驚きで目を見開く瀬川に、次々と写真を表示して見せていく。

「ああーこれ、相手にボール取られた時のやつだ」

「うわあ……転んだところまで撮られちゃってる」

「おっ、この時のパスは我ながら最高だったと思うんだよね」
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