毛布症候群

くる、と身体が反転した。そこに見えたのは地面じゃない。

"自分"だった。

手を伸ばす。落ちていく自分の目から水滴が出て、あたしの頬にぶつかる。
泣いていたから。



「……っ」

最悪な目覚めだ。窓の外は小雨が降っている。

勿論あたしの夢じゃない。誰の夢かは分かっていた。

斜め後ろを振り向く。ちょうどチャイムが鳴って、先生がチョークを置く音がした。

周りががやがやとし始めて、小塚繭巳が起きる。青白い顔と目が合ってすぐ逸らした。怖いと思った。

自殺する夢を見る理由なんて知りたくない。

机の上を片付けず、教室を出た。校舎裏の水場まで来て、口を濯ぐふりをして顔を洗った。

頭と心臓が重たい。屋根のないコンクリートを小雨が濡らして色を変えていく。



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