無糖バニラ
パティスリーVanillaの正面入り口が開いて、顔を見せたのは翼。


まだいたし。

私服姿を見たのは、すごく久しぶりな気がする。

制服の時よりも、脚が長く見えるような……。


「お、おはよう!」

「ああ」


勇気を出してあいさつをしてみても、返事はたったの2文字。


「今日、ありがとう。あ、あついねー」


緊張のせいで、見事なまでの棒読みで、右手でパタパタ自分の顔を扇ぐ。


「暑いのは、お前がそんな格好……。……いや、いい」


翼はあたしの服装に何か言及したいようだったけど、途中で口をつぐんだ。

この長袖かな……。
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