HOPE・RUA・FORTH
第1章 【始まり】
「母さん…」
赤髪の少年は机に置いてある料理を見てガッカリしている。
「また、もやし…」
「なによ!もやし好きでしょ❤」
「嫌いだよ!3日連続ってなんだよ!」
「しょうがないでしょー、最近は不景気なんだからー」
「家が1番不景気だよ…」
少年の名は『ニクス』14歳。
最近、誕生日に真紅のネックレスを親からはもらった。
『アルヴィン王国』に住んでいる、ごく普通の家族の少年。
この世界には『フォース』という不思議な能力が生まれていた。
さらに、それとは違う力、世界を揺らがす12の力『アルティメイトフォース』というのが存在しているが、その存在は多くの人は信じてない架空の力となっている。
「何か言ったかしら…?」
母さんから異常なオーラを感じる。
「…うっ、はぁこんな父さんみたいなもやし嫌だよぉ」
「誰がもやしだってぇ?」
後ろからニクスの頭を握る父さんの姿があった。
「いただだ!冗談だよ!冗談!」
「ふふふっ、あなたそれくらいにしたら」
「おぉ、悪い悪い」
父さんはニヤニヤしながら手をはなしたが、まだ頭がじんじんする。
「加減してよもう…おぅ…じんじんする」
「そんなに嫌だったら、買い物に行ってきてくれる?」
「えー、母さんが行けばいいじゃん!」
「嫌よだってここ山の中よ、街を往復する体力はないわねぇ」
母さんは手を頬に当て、困ったような顔でニクスを見つめるが、ニクスは(でたよ、変な理由で押し付けるのが…)と思っていた。
「はぁ、わかったよ、そのかわり俺が好きな物も買ってくるからね」
「はーい❤ニクス大好き!」
「このクソババア…(ボソ」
「…ぁ?」
「さぁて!気合入れて行ってくるか!」
そしてニクスは疲れた顔で、街に買い物いった。

「えーっと、ニンジンとキャベツとジャガイモ下さい」
「おう!新鮮のあるよ!」
野菜を買ったニクスは街の人達がザワついてるのが気になった。
「何かあったんですか?」
「えぇ、存在してないと思われてた『アルティメイトフォース』が、この先の山の中で見つかったらしいのよ」
「え…」
「それで今、十二騎士団達が向かって行っているらしいわ」
「そんな…」
ニクスは手の力が抜け、野菜が入っている袋が落ちる。
そして、一瞬固まったがすぐに家に向かって無我夢中で走りだした。
「母さん…!父さん…!無事でいてくれ!!」

ニクスが家に着く頃には周りが暗くなり始めていた。
「はぁ…はぁ…よかった…電気はついてる」
もう疲れて歩きながら家に近づくと叫び声や怒鳴り声が聞こえてくる。
それを聞いた瞬間、ニクスの背中に冷や汗が出てきた。
おそるおそる家のドアを開けると、そこには…。

「『アルティメイトフォース』はどこにあるんだ?」
「この家にはない!帰ってくれ!」
「あなた…」
十二騎士団の2人がニクスの父さんと口論してる人とソファに座ってジッと父さん達を見ている人がいた。
「おい、カイトどうだ?」
口論している人がソファに座っているカイトという人に言っている。
「嘘…ついてるねぇ、僕の眼は騙せないよ」
「な、デタラメを言うな!」
「確かか、カイト」
「(クソ…バレてはいけない…顔に出すな)」
「ふはは、顔に出すなだなんて」
突然笑うカイトに父さんは驚いた顔をしていたが一瞬で理解したような顔をした。
「まさかお前、フォースを…」
「せーかい!僕の『フォース』は『相手の心が読める』能力なんだぁ」
「確信犯だな、さぁ『アルティメイトフォース』を渡してもらおうか」
「どうして『アルティメイトフォース』を狙うの?あなた達には必要ないでしょ!」
我慢できずに母さんが怒鳴った。
「ふむ、なぜってその力があればこの国を、十二騎士団だけで守れるからだ」
「守るって何をよ!王様?この国?あなた達は何もわかってないわ!」
「ほぉ?何をわかってないんだ?」
「あなた達は自分の成果を王様に見せつけたいだけでしょ!しかも王様を満足させる為なら国民が苦しむ事を平気にする…まるで王様の下僕ね」
その言葉を言った瞬間、口論していた男は腰についていた剣を抜き、母さんに突きつけた。
「口が過ぎるぞ、俺達は俺達の正義で動いている、けして王の下僕ではない!」
「おい、あまり刺激するな!」
父さんが母さんを自分の後ろに隠す。
「だって…」
「あぁあ、ボロスを怒らしちゃったぁ〜まぁ、僕は王様の下僕でいいけどね、一生遊んで暮らせるしぃ」
「それに、その力が悪の手に行ったら危ない、さっさと渡せ!」
「嫌だね、お前達に渡した方が危ないな」
「はぁ、もういいお前らを国の反逆者として処刑する」
「「……ッ!?」」
「が、その前にカイト、『フォース』を使って『アルティメイトフォース』を探せ」
「待ってましたぁ!」
カイトが父さんをジッと見つめようとした瞬間、父さんが母さんを連れ逃げようとするが足を踏み出した瞬間、父さんの腹部にボロスの剣が貫通し、そのまま母さんの腹部まで貫通していた。
「…グフッ」
「あな…た…」
「みぃーーつけたぁ」
ガロウは剣を2人から抜くと、2人ともその場に倒れた。

…ガチャ。

「とう……さん……かあ…さん?」
「そいつのネックレスが『アルティメイトフォース』だ!」
それ聞いた瞬間、ガロウがニクスの方に、行こうとするが父さんがガロウの足を掴んだ。
「母さん!ニクスを連れて逃げるんだ!!」
「あなた!!」
「早く行け!!」
「母さん!!父さん!!」
ニクスが2人に向かって走ろうとするが、母さんが立ち上がりニクスの手をとって森の中に走っていった。
「くっ…その汚い手をはなせ」
ガロウが父さんの背中に手を置くとバァンッ!!という音と同時に父さんが床に押しつけられ、めり込んでいる。
「俺の『フォース』は『触ったものを吹き飛ばす』能力だ」
「……誰に言ってんの?もうぉそいつ…死んでるよ」
「あぁ、そうだな…追うぞ母親の方は重症だ、そう遠くには行けないはずだ」
「りょぉーかい」

ただただ暗い森を走り抜けるニクスと母さん達だが、母さんに限界がきて足が止まってしまう。
「はぁ…はぁ…行って!」
「意味わかんねぇよ!!どうなってんだ!」
「…あなたにあげたペンダント…それが騎士達の狙いよ」
「え…なんでだよ?」
「それが『アルティメイトフォース』だからよ」
「意味わかんねぇよ…」
ポロポロとニクスの目から涙がこぼれる。
ニクスにはわかっていた。
ここで逃げたらもう母さんには会えないと。
もう父さんには会えないと。
「それがきっとあなたを守ってくれるわ…さぁ、もう行きなさい」
「嫌だ!…嫌だよ…嫌だよ母さん」
「ニクス…」
「もうこれをあいつらに渡せばいいじゃんか…」
「それはダメよ、騎士達はきっと間違った使いからをして私達、国民を苦しめるわ…」
「そんな…」
「ニクス…あなたはきっと、それ力で多くの人を、この国を救えるわ…」
「無理だよ…俺にはそんなこと」
「できるわ…あなたならできる、あなたは強くて…とても…とても…」
母さんは泣きながら…ニクスの頬に手をそえて、今にも途切れそうな声で…優しい声で言ってくれた。
「…優しいもの」
それを聞いた瞬間、ニクスは涙が止まらなくなった。
「わかった…わかったよ母さん」
「いたよ!ガロウ!」
「さぁ、早く行って…」
「…わかった」
そう言うとニクスは振りかえずに、真っ直ぐに走った。
「愛してるわ…ニク…ス…」
騎士達の2人が母さんの前で足が止まった。
「立派な母親だな…」
「そおぉ?僕的にはウザイんだけど〜」
「もうそらそろ終わらせるか」
ガロウは少し走ると前にある大きな大木を思いっきり殴った。
するっと大きな大木は真っ直ぐ勢いよく飛んでいき、前にある大木や木をなぎ倒していった。
「うわっ!?…木が飛んできた!?」
「もう逃げられないぞ少年」
「もう、諦めて渡しちゃえばぁ〜?」
「誰が渡すか!」
「でも、かなり心の中では怯えてるみたいだけどぉ?」
「ぐッ…」
「ほら、早くそのペンダントを渡しなさい」
ニクスはペンダントを手に持ち胸に当てた。
「俺はこの力で、狂ったこの国を変えてみせる!どんな困難だろうが俺は父さんと母さんが愛したこの国を救ってみせる!」
そう言った瞬間、ニクスの周りに炎が円を描くように弾け飛び回っている。
「俺の元に来い…そして、力を貸してくれ!!『アルティメイトフォース』!!!」
ニクスは手に握っていた真紅のペンダントを強く握ると、ペンダントは砕け、砂状になってニクスと一体化した。
「なんだと…!?」
「もうお前らの好きにはさせない!!」
ニクスの背後に大きなフェニックスが現れたような炎がうずまく。
「すごい力だ…」
その炎の風圧で木が倒れ、その先は崖であった。
「ガロウ、どぉうする?」
「愚問だな…あれでは渡す気はないだろ、なら戦って奪い取るまでだ」
「上等だ!」
ニクスが戦う構えをとろうとした瞬間、ニクスの炎は全て消えそのままよろけて崖に落ちてしまう。
「…ウソ…だろ」
「あぁ〜あ、力尽きちゃった」
「まぁ当然か、あの年であそこまで『アルティメイトフォース』を使ったんだからな」
「どぉするの?」
「この下は確かに川が流れてるはずだ、生きてる可能性があるかもしれない、探しに行くぞ」
「へぇーい」


…ここはどこ。
真っ暗だ…。
母さん…父さん…どこにいるの?
あ、母さん、父さん!
…どうして、そんなに悲しい顔をしてるの。
どうして泣いてるの?
あ、まってよ。
行かないで。
母さん、父さん!
まってよ!俺も行く!
なんだよこれ、足が動かない…。
母さん!父さん!行かないで!!
俺を一人にしないで…。

俺はふと目が覚めると、知らない天井、知らない部屋で眠っていた。
「母さん…父さん」
あぁ、そうだ。
俺一人なんだ。
「ここは…?」
部屋のドアが開き、おじいちゃんが出てきた。
「おぉ、起きたかね」
「だ、誰?ここはどこ?」
「お主、わしが海岸で散歩しとったらお主が寝てたんで連れてきたってとこらじゃ」
「そうなんですか…ありがとうございます」
「いいってことよ、…詳しい事は聞かんが、お主ヒドイ顔をしとるぞ」
「…すみません、すぐ出ていきます」
「いやいや、泊まっていかんかいな」
「…え」
「そんな、今にも死にそうな子供を行かせるわけにはいかんな」
「いや、申し訳ないですよ」
「気にせんでいいわい!わしゃ一人やから困らんしのぉ!」
「いいんですか…」
「もちろんじゃ!」
「ありがとう…ございます」
そっと、おじいちゃんはニクスの前に行きニクスを抱きしめた。
「……ッ!?」
「お主、さっきから悲しい顔をしてどうしたんじゃ」
「え…」
「きっとヒドイ事でもあったんじゃろ、もう大丈夫じゃ」
そのおじいちゃんの優しい温もりが家族の…父さんと母さんに似ていた。
そう感じたたニクスは、もう涙が止まらなくなった。
「おぉおぉ、どうしたどうした」
「すみません…」
「ふふふ、おかしな奴じゃ」
「あはは…すみません」
ニクスの顔に少し笑顔が戻った。


      1年後

「本当に行くのかい?」
「えぇ、本当にお世話になりました」
「ふふふ、孫が旅立つみたいじゃ」
「はは、止めて下さいよ」
「よし!お主は優しいくて強い子じゃ!絶対にやっていけるわい!」
《あなたは…強くて、とても…とても…優しいもの》
「母さんと同じくこと言ってくれるんですね」
「…そうかい、お主の母もきっと優しくて、とてもいい人なんじゃろな」
ニクスは、ためてた涙がポロりと落ちてしまった。
「ふふふ、お主は本当に涙もろいのぉ」
「本当ですね、すみません」
ニクスは笑いながら涙をふき、おじいちゃんを抱きしめた。
「おぉ、なんじゃ」
「本当にお世話になりました」
「いいってことよ、また困ったらいつでも来ていいからな!」
「ありがとうございます」
「おう!」
「じゃあ、行ってきます!」

そして、4年の月日が流れた。
ニクスは20歳になる。
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