孤独少女~Kiss Me~
「はーい。焼けました」



愛陽さんが持って来てくれた烏賊の一夜干しが焼き上がり、テーブルへと運ぶ。

まだダイニングテーブルがない為、我が家から持って来たリビングのローテーブルへと運び、私は吞まない為、食べる方に専念。

とは言え、お客様2人と雑な翔希を動かす訳にはいかず、お手拭きを用意したり、焼酎用の氷や水を運んだりと、落ち着いていられない。

せやけど、こんなんはきっと最初だけ。

今だけだと、苦には思ってない。



「愛李は動くねー。座ったら?」



「気にせず呑んでて下さい」



「私も主婦や。頼ってくれてえーよ?」



「でも、今日の愛陽さんはお客さんやから」



「そー?甘えちゃうで?」



「どうぞ?」



普段は喜多見邸でしか会わないし、お世話になった時も含めて、私はいつも甘えて来た。

たまにはゆっくりして貰いたい。



「でも、不思議やわ。元ちゃんの生徒やった子を引き取って面倒見て、今や主婦仲間やん?こんな日を、愛李と同じ年の頃は想像してへんかった」



「私も。母親を取られたり、担任と結婚するなんて、1年前には思わなかったです」



翔希に憎まれ口を叩いてた自分が信じられない。
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