姉妹ものがたり


「皐月の気持ち悪い笑顔が、怖すぎて夢に出そうなんで帰りますね」

「おい、こら」

「気をつけてね、またいつでも遊びに来てちょうだい」


弥生の言葉に、あからさまに嬉しそうな笑みを浮かべる慎也に、皐月は“ふんっ”と鼻を鳴らしてそっぽを向いた。
パタンと扉が閉まる音にようやく顔を戻してみれば、そこには既に慎也の姿はない。


「しんやくんって、明るくていい子よね」


振っていた手を下ろして、ニコッと笑った弥生に、皐月はむくれて答える。


「どこが…あんな奴バカだし変態だし、無神経だしムカつくし、イライラすることしかない」


玄関に背を向ければ、異様に嬉しそうな慎也の顔が思い浮かぶ。
思い返すたびに、どうしようもなく腹が立ってくるその笑顔を、皐月は大きく頭を振って打ち消した。


「あんな奴、激しくどうでもいいし!今はそれよりも、テストでどれだけ高得点をたたき出せるかの方が大事」
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