姉妹ものがたり

しばらくの沈黙のあと、言葉を失って口をあんぐり開けたまま固まった。
木田の言葉に、雷にでも打たれたかのような衝撃が全身を襲う。
“異性として見られていない”今まで考えもしなかったことだが、言われてみれば思い当たる節がいくつもある。


「どんなに頑張ってアピールしてもさ、異性として見てもらえなきゃ意味ないんだよ」


微妙に重苦しいため息を吐きながら、木田が悲しげに目を伏せる。

手にした飲み物を弄ぶように揺らして、ストローに齧り付く木田の姿をジッと見つめて記憶を辿れば…想い人の目線の先には、いつだって彼女の妹の姿が映っていた。


「確かに…おれも、妹と仲良しのクラスメート、くらいにしか思われてないかも」


その瞳に自分の姿が映ったことは、きっと数える程しかない。


「つまりはそういうこと。
それより、他の中学生は皆勉強してるみたいだけど、三上はやんなくていいの?」


木田の言葉に周りを見渡してみれば、学ランやセーラー服の学生たちがあちこちでノートや教科書を広げてシャープペンシルを握りしめている。

その姿に、ふと…テスト前になると鬼の形相で参考書とにらめっこする皐月の姿が思い浮かんだ。
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