姉妹ものがたり

疲れたように息をついた木田は、今度こそ店の出入り口に向かって歩き出す。

ヒソヒソと興奮気味に交わされる会話の断片を背中に聞きながら、そっとそのあとを追いかけると、店を出たところで足を早めて木田の隣に並ぶ。


「木田さん、ひとつだけいいですか?」

「どうせダメって言っても、喋るくせに」


僅かに歩調を緩めた木田と、並んで歩く。


「木田さんは、苦しくなったりしないですか?」


ポツリと呟いた声は、重くもなく暗くもない…自分でもびっくりするほどあっさりとしたものだった。


「苦しいってなにが…?気持ちを伝えたいのに、伝えられないこと?…それとも、子供扱いされて異性として見てもらえないこと?」


答える木田の声も、何処か淡々としている。


「よくわかんないですけど…たまに、苦しくなるんですよ」


自分でもうまく表現できないことがもどかしくて、ガシガシと乱暴に頭をかく。


「苦しいってさ」


そんな時、ポツリと呟いた木田の声にふと視線を向けてみる。
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