姉妹ものがたり
しばらくそうして抱きしめていた母は、ようやく体を離すと、涙で濡れた頬をそっと手で拭った。
その様子を見て、何となく理解した。
やっぱりあれは、夢ではなかったのだ。
「…お母さん」
優しい笑顔と、安心する香り、それから…包み込むような、温もり。
顔はぼんやりとしか思い出せないが、それだけははっきりと覚えている。
「弥生…?」
心配そうな顔で覗き込んでくる母をぼんやりと見つめながら、最後に見た笑顔を思い出していた。
あの人は、一体…誰だったのか。
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