逃避心
奥手
美緒は28歳。社会人7年目でバリバリ仕事をこなすキャリアウーマンを気取っている。

去年5年付き合った彼と別れた。

仕事のようには恋愛は上手く行かない。
学生の頃に比べ明らかに出逢いが減っていると実感する。

ただ社内に気になる人がいた。
管財部の健一だ。
一歳年上で独身、周りにはイケメンと称され気軽に関われる環境ではない。

叶わぬ恋なら早々に諦めようと思った。
寄り道して遊んでる暇はない。


昔は好きな人には猛アタックして
駆け引きをして手にいれてきた。

ただ年々その駆け引きも疲労に変わり
自信も歳と共に失い、
夢では歯が抜けるという悪循環だ。

夢診断------------------------------
歯が抜けるのは凶
自信が失われている証拠
------------------------------------------

いったいどうすればいいのよ。
美緒は心の中で呟いた。

健一とは先月まで恋人と
間違われるレベルで仲が良かった。

毎週ご飯に行き、休日も遊びに行き
毎日LINEをしていた。

普通と違ったのは健一の精神状態だろう。

周りが栄転していく中、
自分だけがとどまっている状況に
心が壊れそうになっていた。

「そんなあなたでも好きだよ。」
「私が守るからね。」

何度も声をかけた。

健一は私のことが好きでもないことは
わかっていたし、諦めていた。
でも好きな人だから悲しんでほしくない
一心で側に居続けた。

見返りを求めない行動に
これが無償の愛かと思っていたが
そんなに簡単なことではない。

何度も泣いた。
報われない苦しみに傷ついた。

それだけならまだ我慢ができたのかもしれない。

毎日続いていたLINEも返信が遅れ始め、
送れば一言二言は返ってくるが
続くことはなくなった。

他に支えてくれる人ができたのかな
でもそれは嬉しいことだよな。
でも嫌いになったのかもしれない。

美緒の心に色々な感情が交錯した。
そして明らかに避けられている気がした。


「私の役目ももう終わりか。」

諦める為に今までの写真を全部消したかったが消せなかった。

「28にもなってバカだな。」

誰にも相談できないモヤモヤを
抱えてまた今日も1日が終わる。
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