小さな花 〜あなたを愛した幸せな時間〜
「俺、結婚すんだよ。」


「…………は?聞いてねぇよ?」



さすがのタクトも今日2回目の驚きだったろう。

いつものポーカーフェイスも崩れっぱなしだ。


「お前の言ってること、まったくわかんない。ていうかわかるわけない!」


タクトはそう言うとビールを喉へと流し込む。


「…俺もわかんな〜い!」


ふざけてみたがタクトは冷たい目で俺を見ると「マジで!!」と言い放つ。


俺は“ゴメン”と言うように少し目を伏せ、そして言った。



「シュンのさ…女、わかる?」

「あぁ。ナナコチャン?1回シュンの家で3人で飲んだことある。葬式、泣いてたな。」

タクトはビールを飲み干すと俺を見た。


「飲む?」

「いらん。話きく。」

「…ハイ。」


タクトは酒飲みモードから語りモードに切り替えたらしい。

「で?ナナコちゃんとお前の結婚はどう関係するわけ?お前の好きなナナちゃんとは終わったんだろ?」


「…あぁ……ていうかそのナナコちゃんと結婚すんだよ!」


「………」



沈黙。

ガヤガヤとしたバーの雑音をしばらく聞く。



< 212 / 416 >

この作品をシェア

pagetop