管理人は今日も憂鬱(イケメン上司と幽霊住人の皆さん)


「どうかした?絢ちゃん」


「えっ…?」


空き部屋の掃除に入り、台所の上の作り付けの扉を開けたまま、固まっていた絢に、南科が心配そうに。


何か手伝うと言ってくれたので、とりあえず中に入ってもらっていた。


「いいえ!?なな、何も、何もないですよ!?」


どうした私!?


「……蒼真さんと、何かあった?」


表情が曇る。


「え"っ!?何で蒼真さんが出てくるんですか!?」


「……いや、なんとなく」


「そ、そういえば、住み心地はいかがですか!?」


話をそらす。


「いい人ばかりだね。赤ん坊もいるみたいだけど、夜泣きしないし。工場の人も親切で」


見えるのだ。


夜泣きしない赤ん坊などこの世には存在しない。


幼児とは、はしゃいでテンションが上がり、奇声を発しだすと他人の不快指数は上がる。


けれど、泣くのは仕事だ。


気付いていない。ああ、どうすれば。


いやけれど、南科なら事情を話せば出てくれる。きっと。


そうしたら、とりあえず手放せる。売るなり壊すなり。


手放せる。


どうした私???


嬉しくないのか!?



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