その背中、抱きしめて 【下】



「いや、でもほんとにアレは意外すぎて私も赤面した」

校庭に向かって歩きながら、さくらちゃんが顔を赤くして言う。


高遠くんに頭ポンってされること多かったから何とも思わなかったけど、そうか…高遠くんのキャラじゃないかもしれないな。

私に対してはかなり雰囲気変わったけど、みんなの前じゃまだまだクールな高遠くんなんだね。



50m走と走り幅跳びをさっさと終わらせて、階段スタンドで一旦休憩する。


「相変わらずおっそいね、短距離」

後ろからの声に反射的に振り返ると、高遠くんが上の段に座ってた。

「あれだけジャンプ力あれば脚力あるんだから速いはずなんだけどね」


「もう!後ろから覗かないでよー!」

記録の書かれた紙を胸に抱き寄せて抗議する。



そりゃ相変わらず8秒台中盤ですよ。

5秒台前半の人から見たらありえないくらい遅いでしょうよ。


「…まるで夫婦漫才だね」

さくらちゃんが苦笑いした。


「翔、好きな人いじめるタイプ?」

早瀬くんが高遠くんに聞く。

「いじめないタイプ」

「彼女のこといじめてんじゃん」

「いじめてない、いじってんの」



”いじってんの”

嬉しいような恥ずかしいような、顔が少し熱くなった。



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