その背中、抱きしめて 【下】
それから夕方までの記憶が結構あいまい。
新入部員の話とかしたかもしれない。
相川くんと桜井くんのこととか、芦澤学園に入った高遠くんたちの後輩のこととか。
最後の方には高遠くんも機嫌が少し戻って、3人で仲良く話せた(と思う)。
「先輩、そろそろ送る」
相変わらず日暮れ前に家に着くように気にしてくれる。
我ながら過保護にされてんなぁ、私。
「もう?まだいいじゃん」
清水くんが時計を見て高遠くんに掛け合う。
たしかにまだ4時半。
でも高遠くんは
「先輩女だから夜道危ない。それに、夕飯の時間だってあるし」
そう。
高遠くんは私が夕飯の時間に間に合うように送ってくれる。
たとえ日の長い夏でも。
「お父さんかよ、お前」
清水くんが呆れ顔で笑った。
「じゃあ、柚香先輩送ってったあとにラーメンでも食いに行こーぜ」
清水くんの誘いに高遠くんは
「いいよ」
って承諾した。
「ただし、お前は駅で待ってろ」
っていう条件付きで。