冷徹社長が溺愛キス!?
雷鳴とどろく中、山小屋で


雲ひとつない青空。
土曜日の早朝は、まだ少しだけ空気がひんやりとしている。
ピュアネットジャパンの従業員総出の恒例行事、山登りの日だった。

大型バス十台で乗りつけた山の麓は、リュックを背負った社員で溢れかえっていた。
仮病で休んじゃおうかと言っていた麻里ちゃんは、浮かない顔をしつつも、ちゃんと参加している。


「はぁ、憂鬱だな」


麻里ちゃんが登る前から大きな溜息を吐く。


「親睦を深めるなら、苦しみながらじゃなくて楽しみながらに方向転換してくれないかな」


きっと無理であろうことを延々呟くから、私は隣で笑ってしまった。


「はい、それでは皆さー……ピーッ!」


スピーカーから割れた音が山に響き渡る。
幹事は、何度か試しに声を出して調整してから、もう一度みんなに向かって話し始めた。


「これからバスごとに集合写真を撮ったあと、登山を開始します。コースマップはみなさん、手元にありますかー?」


『はーい』という声が、あちらこちらから上がる。

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