飛梅ちゃん
あいは、酔いざましに寮の少し前で車を停めてもらった。

一人で少し歩きたい気分になったのだ。

都会の喧騒から隔離されたような雰囲気が漂う。

それは、深夜だからなのか民家が疎らに立つ住宅地だからなのか。

道路には背の高い雑草が生えていて、進行住宅地が途中で開発をやめた雰囲気がある。

ゆっくり、あいは車を降りると、挨拶もなしに歩き出す。

車はいつものことだとばかりにUターンして帰って行った。

電灯も少なく、もしも襲われでもしたら誰も気がつかない。

そんな道を、あいはフラフラ歩く。

上に大きな橋がかかっている下を歩く。

少し距離があるが、あいは橋の下を通り越す辺りに何かが見えた。

一体なんなのか?あいは、じっとそれだけを見て歩き近づく。

5、6歩、近づいた時だった。その物体はゴソリと動いた。

酔いが一気にさめる。

あいは、それでも気後れせずにペースを落とさず歩く。

一歩一歩近づいていくたびに、鼓動が速くなるのに気づく。

もう後10歩で、その何かにたどり着くという所で、あいはその物体が何かわかった。

正体は、女の子だった。

あいは、声をかける。

「どうしたの?」

女の子は振り向いた。

赤いワンピースのオカッパ頭の女の子は、あいに言う。

「お姉ちゃんこそどうしたの?」

あいは、意味がわからなかった。

「お姉ちゃんは、仕事帰りだよ?あなたは?」

女の子は、不気味な笑顔を浮かべると
「まだかくれんぼの最中。」
と答えた。

あいは、何故か怖くなって走り出していた。

あいは、振り向くことができなかった。
ずっとあの女の子が、あいに話している。

「もう少しだからね。かくれんぼが終わるよ。もう少しで…」




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