いつかそんな日がくればいい。【短】
期待…するよな。
もしかしたら、この恋が叶うんじゃないかと。
ずっと願っていた、“特別”になれるんじゃないかと。
俺は、白田さんの肩に手を掛ける。
「だっ…だめ!」
白田さんは、断固俺の方に振り向くまいと力を込める。
「なんで?」
俺は、分かっているのにわざとそんなことを聞いてみせる。
「…っ、だって、きっと松田君…困る…」
「困らないよ」
肩に掛けた手に力を込めると、案外簡単に白田さんを振り向かせることが出来た。
「だめって…言ったじゃないっ…。松田君は、泣かれるの嫌なんでしょ…?」
初めて見る白田さんの涙は、思っていた通り…いや、思っていた以上に綺麗で、
強気に見せていたその表情も、今ではもうクシャクシャなのに愛しくて、
気が付いたら俺は、彼女を抱きしめていた。
「っ!松田く…」
「嫌じゃないよ」
「…え?」
「白田さんが泣くのは嫌じゃない」
自分でも不思議だと思う。
女の子の涙なんて、何度見てもうろたえてしまうもので、
出来れば避けて通りたいものだった。