いつかそんな日がくればいい。【短】

白田さんは、驚くように目を見開くと、色白の頬をピンクに染めて目を泳がせた。


まぁ、俺はそれが何でかなんて、分からないんだけど。


「な…によ…それ…」


「え?なにが?」


「あなたそれ天然なのね。何だかあなたが王子呼ばわりされるわけ、少し分かったような気がするわ」


「??」


ん?王子?何のことだ?


「もういいのよ。浴衣なんて。見せたい人は、ここにはいないもの」


白田さんは苦笑すると、「それじゃあね」と言って、俺に背を向けた。




なぜだかなんて、俺だって分からない。


気が付いたら、そんな白田さんの腕を、俺は咄嗟に掴んでいたんだ。




「…何よ?まだ何かあるの?」


俺は一体何をしているんだろう?


こんなこと言って、どうするんだ?


だけど、去っていくその小さくて華奢な身体を、俺は黙って見送るなんて出来なくて…。




「一緒に祭り、回らない?」



気付いた時には、そんな事を言っていたんだ。


< 8 / 49 >

この作品をシェア

pagetop