じれったい
私がいい子だと思ったからキスをした?

「よくわからないのですが…」

呟くようにそう言った私に、
「今はわからなくても構いません。

君が時間をかけて、僕のことを理解すればいいだけの話ですから」

玉置常務が答えた。

「理解って…」

キスされた理由がわかったけれど、玉置常務の気持ちはわからないままだった。

「あっ、雨があがったみたいですね」

玉置常務に言われて空を見あげると、雨はあがっていた。

雲のすき間から太陽の日差しがこぼれていた。

どうやら、通り雨だったみたいだ。

「晴れてよかったですね」

玉置常務はそう言って私を見ると、
「行きましょうか」

そう言って手を差し出した。

差し出されたその手をどうしようかと迷ったけれど、その手を繋ぐことを私は選んだ。
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