じれったい
「――ごめんなさい…。

ごめんなさい、兄さん…」

泣きながら謝った玉置常務に、
「――和歳…俺も、悪かった…。

そう思われるくらいのことをした、俺が悪い…。

謝るのは、俺の方だ…」

お兄さんは慰めるように言った。

「――ごめんなさい…」

過去と向きあって、絶ち切ることができた。

玉置常務とお兄さんの声がそろった瞬間、私は思った。

お兄さんに抱いていた憧れを、玉置常務は絶ち切ることに成功したのだ。

そして、お兄さんとも和解ができた。

その瞬間を確かめた後、
「――私、看護師さんを呼んできます」

その場から離れた。

よかったと、私は彼らに気づかれないように涙をこぼした。
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