四門メグへの手紙~魔女の瞳番外編~
「!」

ビュオッ、と。

風を切るような音を立てて、ジルコーは私の頭上に右の爪を振り上げました。

「え…?」

呆然と彼を見上げる私。

その爪が振り下ろされ。

「出やがったな墓荒らしが!」

高速の振り下ろしの際に発生した風圧が、私の背後に迫っていた『敵』に直撃しました。

「な!?」

全く気づきませんでした。

私は振り向いて、その敵の姿を確認します。

…ジルコーの爪の風圧を受け、その敵は身を起こす所でした。

血の気の引いたような青白い肌の色。

皮膚はかさついて、所々剥がれ落ちてカサブタのようになっています。

腰にボロボロの布切れを巻いただけの姿。

漂う体臭は、完全に死体のそれでした。

髪の毛すらなく、埋葬されて腐敗し始めた死者が、そのまま動き始めたかのような魔物。

ジルコーの読み通りでした。

グール。

やっぱりこの外人墓地を拠点としていたんです。

「しかしこりゃあ…」

ジルコーの紡ぎだした言葉には、若干の驚きが含まれていました。

通常グールというのは、人間と然程変わらない体格の魔物です。

でも私達の目の前に現れたのは、明らかに人間よりも大きなグール。

長身のジルコーよりも、頭一つは大きいでしょうか。


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