誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
六 御陵衛士


江戸の試衛館で集っていた頃は、貧しさのために苦労したり、若さゆえに意地の張り合いや喧嘩をしたり、何かと騒がしかった。


誰もが無邪気だった。


血生臭い闇を知らぬまま、剣で身を立てることを夢に見ていた。



天然理心流は、道場長の近藤、色男の土方、天才少年の沖田、学者肌の山南と、彼らを見守る最年長の井上。


他流を使いながらも試衛館に入り浸っていたのは、快活な気風の永倉、槍使いの猛者の原田、最年少でやんちゃな藤堂と、左利きの異端児の斎藤だった。


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