誠狼異聞―斎藤一、闇夜に駆けよ―
二 吉田道場


池田屋突入とその翌日の残党狩りという一連の騒動を、新撰組局長の近藤は、洛陽動乱【らくようどうらん】と名付けた。


新撰組は、市中を火の海にしようという長州藩の企【くわだ】てを阻止したとして、またたく間にその勇名を京都に轟かせた。



騒動が落着した翌々日、斎藤と朝から屯所で鉢合わせた藤堂が、額の傷を誇らしげに晒【さら】してみせながら言った。



「幕府から報奨金が出るぞ。


会津の殿様も、えらく誉めてくださってたらしいし、会津からもいくらか余分に頂戴できるかもしれねえ。


これで新撰組は、ようやく借金から解放されるな」


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