本当の遠距離恋愛 1

 紗希もよく仮病をつかった。

 宿題が山のように出たときなんかは仮病をつかった。

 そんなことはママも承知である。

 嘘にのっているのだ。

 もちろんそんな子ばかりではない。

 が、

 そんな子は多い。

 
 愛美は本当にアヤちゃんのことを心配している様子だったが、
  ママはそれほどでもない。

 ママはわかっているのだ。

 少し沈黙が続き、

 そしてその沈黙を破ったのはママだった。

 「ねえ、紗希ちゃん、今日はこれから仕事?」

 「いいえ、今日は完全にオフです」

 愛美は怪訝そうにママと紗希を交互に見つめている。


 「紗希ちゃん、突然こんな事言ってごめんなさいね、
  気を悪くしないでね」

 「はあ・・・」


 「さっきの話聞いてたかもしれないけど、
  店の女の子が突然休むって電話があって・・」

 「はい・・」

 「紗希ちゃん、今日1日だけでいいから手伝ってもらえないかしら・・」

 「えっ!?」

 ママの提案に驚いた。

 「いや、私なんて足手まといになるだけですから・・・」

 「いいの、座って話だけしてくれればいいから」

 「そんな・・・無理です。ママの顔に泥を塗るようなマネ
  できません」

 「紗希ちゃんは1回でもこういうところで働いたことない?」

 「はい、ありません」

 
  紗希は嘘をついた。

 「ごめんなさいね・・気にしないでね・・」

 とママは言ったが携帯を見て、今日休みの女の子に電話をかけはじめた。
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