本当の遠距離恋愛 1
 それからの紗希は「紀和」に戻ることはなかった。

 
 あの電話がかかってくるまでは・・


 
 紗希は看護師の仕事を完璧にこなし、今年、
  「主任」に昇格した。

 「主任」と聞くと聞こえはいいが、
  所謂、「中間管理職」である。

 上は看護師長から、下は他の看護師からとやかく言われる。

 加えて、看護大学生の実習も見なければならない。

 とにかくハードということだ。

 

 勤務が終わり、疲れた体をひきずるように帰宅する。

 部屋にあがると普段ならない家の電話がなった。

 「もしもし」

 親しい友だちでも携帯の番号しか教えてない。


 「もしもし!」

 「愛美?」

 「うん!紗希!久しぶり!元気!?」

 「うん、愛美は?」

 「元気!元気!」

 
 愛美は先月で看護師を辞めた。

 「月」に専念するそうだ。

 完全に銀座の女になった。

 
 「ねえ、これから飲まない?」

 「うん~疲れてるし・・・」

 「いいから、少しだけ顔だしなさいよ!」

 「・・・じゃあ、少しだけ」

 明日は休み、少しぐらい気晴らししよう と軽い気持ちで返答した。



 
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