あなたの願いを叶えましょう
俺は今日という日を、結構楽しみにしていた。

いや、結構なんかじゃない。心待ちにしていたのだ。

デート相手の富樫円もいつもよりめかしこんでいて、砂糖菓子のように可愛らしかった。

もしかして勝負下着なんか着けていたのかもしれない。

そう思ったら、俺も隣の男の子と同じくらい大きな声で泣きたくなる。

そして……

職場に俺と清美さんの秘密の関係がついにバレてしまった。

その事で、女々しくも冨樫に八つ当たりするという体たらく

想い出すと、情けなくなり、いっそう気持ちが滅入ってくる。

長椅子ごと暗い奈落の底に沈んでいくようだ。

あそこまで啖呵をきったのだから、もう俺は事業開発部にはいられないだろう。

そして、冨樫もムキになって言い返す俺にドン引きしてたし

嫌われたかな

口から大きなため息が出て俺は頭を抱えた。

俺と清美さんの仲について、かねてから良くない噂がたっていることは気がついていた。

そこまで俺も呑気に生きてはいない。

今日俺が清美さんを助けたことにより、みんなの抱いていた【不倫疑惑】は確信へと変わったに違いない。

実際のとこ、俺と清美さんが不倫なんて、日本の山中でツチノコが発見されるくらいあり得ないんだけど。

どうせ異動させられるのなら、事実を話して清美さんの名誉を護りたかった。

あの人がこの俺とはいえ、ナオシ以外の男に心を寄せる事なんて決してないのだから。
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