聖獣王と千年の恋を


 本当は黒犬の魔獣フンドゥンにもわかっていた。門を宿す娘がシィアンではないことを。
 シィアンと同じ色と波動の魂に惹かれた。けれど魂に刻まれた名前はシィアンではない。シィアンよりも甘く強い光の匂いがした。

 本来魔獣にとっては不快でしかない輝く陽の気。そのしびれるような禁断の快楽をもう一度味わいたくて娘に近づいた。
 娘はシィアンと同じように輝く陽の気を発しながら優しくフンドゥンに触れる。たまらなく心地よかった。

 傷が癒えて体が再生されたら、また娘に会いたい。それまで忘れないように名前を心に刻んだ。



< 132 / 147 >

この作品をシェア

pagetop