聖獣王と千年の恋を
聖獣殿で兵士に拘束されたワンリーとメイファンは、宮廷内の兵士詰め所に連れて来られた。そこでとりあえずの処遇を彼らの上官が決定した後、取り調べなどが行われるらしい。
それぞれ両手を後ろ手に縛られ、大勢の兵士に取り囲まれて、ふたりは黙って立ち尽くす。そこへ武官がひとりやってきて、兵士のひとりに耳打ちした。
兵士は頷いてワンリーを指さす。
「女はここに残し、男の方は牢に放り込んでおけ」
「はっ!」
周りにいた兵士が両側からワンリーの腕をつかみ、連れて行こうとした。
「ワンリー様!」
ワンリーと引き離される。メイファンは思わずワンリーの方へ一歩進む。しかし周りの兵士たちがメイファンの肩や腕をつかんでそれを阻止した。
ワンリーはまた無抵抗のまま従うのだろう。そう思うともどかしい。ところが今まで抵抗らしい抵抗をしなかったワンリーが、その場に踏みとどまって動こうとしない。兵士が苛々したように腕を引いた。
「さっさと歩け!」
「俺はメイファンのそばを離れるわけにはいかないのだ」
当たり前のように堂々と言い放つワンリーに、兵士は益々激昂する。
「罪人にそんなわがままが許されると思っているのか!」
「許されないのか?」
「当たり前だ!」
「そもそも、俺は罪人なのか?」
「この期に及んでしらばっくれるな! 黙って来い!」
怒った兵士に思い切り腕を引かれて、さすがにワンリーも一歩踏み出す。そして諦めたようにため息をついた。
「わかった。だが、少しだけ彼女と話をさせてくれ」
「ふざけるな! わがままは許されないと言っただろう!」
「まぁ、待て」
顔を真っ赤にして怒る兵士の肩を、先ほど耳打ちした武官が叩いた。
「最後の挨拶くらいさせてやれ。このふたりはガーラン殿の預かりになっている」
「ということは、太子様の……」
「そうだ」