お嬢様 × 御曹司
…早すぎたかも。


ただいまの時間9時15分。


勢いに任せて飛び出してみれば、これだ。


だから予定立てるのとか苦手なんだよなぁと思いつつ腕時計を確認する。


もう5分ぐらいしたらついちゃうのに。


「ま、早く着くぶんには問題ないよね〜♪」


なんて口に出してみる。


時計台前には人がたくさんいるだろうし、一人で待ってる人も少なくない。


時計台前に来ると、祝日ということもあって人でごった返していた。


あぁ違うか、バレンタインだからこんなにかっぷりで溢れかえってるわけか。


これじゃあ、たけくんが来ても私を見つけるのは一苦労。


「でも時計台前って言っちゃったしなぁ。」


そう思いながら時計台の前に出ようとするけど、人が多すぎていけない。


さて、どうしようかな?


「‼︎」


そう思った時、時計台の前にある人を見つけた。


私が、会いたくて会いたくて仕方のなかった人。


なんで、こんな早い時間に…。


約束の時間より随分早いのに、私を待っててくれてるの?


いやいやいやいや、うぬぼれダメ!


よし、いこう。


覚悟を決めてごったがえす時計台前に行こうとする。


「ねぇ、お嬢ちゃん?」


右肩を引っ張られ危うくこけそうになる。


すんごく嫌な顔をして振り向くと、そこにはチャラチャラしたお兄さんが三人いた。


チッ


私は心の中で大きく舌打ちをした。


「俺たちと一緒に遊びにいか…」


「間に合ってます。待ち合わせ中なので。」


こんな奴らに耳を貸すのさえ面倒だ。


さっさと解放してもらお。


掴まれた手を振り払い、相手の言葉を遮って宣言し、歩き出す。


「待ってって♪」


歩き出した腕を引っ張られ、また立ち止まる。


たけくんはまだ私に気がついてないし、こんなに人がいるなら見つかるわけないだろう。


うん、自分でなんとかしなくちゃ。


「だから、俺たちとあそ…」
「間に合ってます。」


「そんなこと言わ…」
「はっきり言って迷惑です。」


「お嬢ちゃんつれな…」
「もういい加減にしてください。私は行きます。」


三人の話も聞かず、私は掴まれた手を振り払い走る。


何がいけなかったのか、三人は怒りぎみに私の両腕をつかんだ。


「いーい?あんたに拒否権はないの♡」


「気持ち悪いです。」


言っていいことと悪いことの区別ぐらい私でもつけられる。


でもごめんなさい、本当にそう思ったから。





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