お嬢様 × 御曹司
そして、私はその犯人の反応を見て、正気に戻った。


ね?わたしつよいでしょ!


こんな奴に、負けてたまるか。


私は閉じていた目を開いた。


心の端で、一つの希望を思い浮かべる。


彼が、私を受け入れてくれるという願望にとてつもなく近い希望。


それは、他でもない、女の恋心。


だから、私が今悲しむことはない。


ただ、ただ願おう。


いま、彼が、助けに来ることを。


絶対に大丈夫。


必ず来てくれるって、信じてるから。


こんなやつ、たけくんならやっつけてくれるって。


信じてるから。


私は、たけくんの素朴で、私の話を聞いてくれる。


そんな、優しいところが好き。


私の心は、兄さんや花が思うほど強くない。


ほんとはもろく、壊れやすい…。


ただ、強がってるだけだから、誘拐だって、本当は…怖いんだからね!


…だから、お願い。


助けて。


助けて、たけくん。


私はここにいるよ。


こんな奴に、負けてないから!
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