「君へ」 ~一冊から始まる物語~


でも...


「私と一緒にお弁当食べてたなんて知られたらまずいから私のことは気にしないで屋上で食べてきて。」


私は唯都に同じ道を歩んで欲しくない。
私がこれだけは譲れないことを知っててこれだけは折れないことも知ってるので、素直に従ってくれた。

そこがまた悲しかったり、寂しかったり...

そしていつものように私の心を見透かしたように笑った。


「わかった。けど今日の下校は絶対一緒に帰るからな。」

「なんで?」

「お前、忘れたのか?今日青兄の命日だろ?」


もちろん忘れた訳ではない。今日が実の兄、小澤青波(せいは)の命日だということをひと時だって忘れた事はない。


「そうだね。でも今日用事があるから先に帰ってて。」


毎年兄の命日には、事故のあったT字路近くの公園で私と唯都と都兄で放課後にお墓参りをしている。


『先に帰ってて』


これが遠まわしの一緒に帰りたくないということだという事は唯都も気づいているだろう。

事故から4年。私に対しての言葉達は日に日に酷くなっていく一方だ。

だからこそ、唯都たちを巻き込みたくはない。

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