「君へ」 ~一冊から始まる物語~



コンコン


「唯都入るよー」


私は呼びかけてから返事が出来ないことに気づいた。


「どうぞ。」


来ないと思った返事が来たので驚いた。


「気づいた?」

「あぁ、記憶は生徒会室で途切れてるけどな。」


唯都がそう言ったので私は今までのことを説明した。


駅で倒れそうなところを見つけたこと。
親切な人と駅員さんに駅の医務室まで運んだこと。
市販薬を飲ませたこと。
都兄に迎えに来てもらって病院に連れて行ったこと。



「そうだったのか。ごめん迷惑かけて。」

「ほんとだよ!体調悪いなら言ってもらわなきゃ。家族なんだから。」


最近私は自分に言い聞かせる言葉が多いなと思った。


「そう言えば俺薬飲んだ記憶全くないんだけど...」




私は赤面してしまった。



「何で顔赤いの?」

「ほっといて!ほらお粥食べて!!」


私はまさか口移しで薬を飲ませたなんて口が裂けてもいえなかった。

お粥を食べようとした唯都だったが、まだ体か動かしにくいらしい。

私は部屋を出ようとしたがあまりにぎこちない唯都の動きを見て、手伝う事にした。


「手伝う。」

「ありがとう。」


そう言って支えた唯都の体はまだ少し熱を持っていて、大きく、たくましかった。

私は唯都を自分の肩にもたれさせて、お粥を食べさせた。

さっきの都兄みたいだった。

そう思うとやっぱり実の兄弟なんだなと思った。


口でフーフーしてから食べさせると、昔のように無邪気に笑って「おいしい」と言った。

そこから薬を飲ましてから唯都を寝かした。

まだ苦しそうだった。

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