「君へ」 ~一冊から始まる物語~



どのくらい時間が経っただろうか

パッと手術室のランプが消えた。


私と都兄は立ち上がって、出入口に駆け寄った。

中から執刀医らしきお医者さんが出てきた。


「先輩唯都は?!」


都兄かきいた。


「失血量が多く、免疫力も低下しています。2、3日が山場でしょう。」


医者は淡々と話した。


「ありがとうございます。」


私たちはそれを言うのが精一杯だった。


「俺一旦家に帰って必要なもの取ってくるから。」

「わかった。」


唯都が病室に運ばれて都兄が出ていくと、機械音が虚しく響いて聞こえた。

その機械音だけが唯都の生きている証だった。



私は少しでも寂しさを紛らわすためにテレビを付けた。



『今日、国道〇〇号線の歩道で刃物を持った男が通行人を刺すという事件が起こりました。
容疑者は通行人によって取り押さえられましたが、3人が軽傷、1人が意識不明の重体となっています。』


無表情で原稿を読み上げているキャスターはその重体1人が小崎唯都など知っている訳が無い。


私は反射でテレビを電源から抜いた。


意識不明と聞くと誰もがもう死にそうなんだと考える。

私も例外ではない。

でも今はそんなこと考えたくなかった。


「やだよー唯都...おいていかないで...」


私は一晩中唯都の角張った手を握っていた。

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