「君へ」 ~一冊から始まる物語~


私たちが書いた想いはまだ残っていた。


目の前に座っていた唯都は急に立ち上がり、私の前に立った。


そしてひざまずき、私の左手を取った。


「俺に玲波を幸せにさせて下さい。」


唯都頭を下げた。


「私に唯都を幸せにさせて下さい。」


私がこう言うと唯都は私の左薬指に赤いリボンを結んだ。


「今はこれぐらいしか無いけど、いつかは本物を玲波の指にはめてやる。」


私たちは始まりのこの場所で2人の体温を分かちあった。
< 246 / 254 >

この作品をシェア

pagetop