ばかって言う君が好き。
Aug
「お疲れさまです。」
彼と仕事終わりに外でご飯を食べていた時に、その電話はかかってきた。
「……その件に関しましては、担当の谷口にお任せしているのですが…。
はい、はい。
じゃあ明日の午後の打ち合わせ時に、詳しく改めて説明します。
お電話わざわざすみません、先輩。
はい。失礼いたします。」
プ。携帯をかばんにしまう。
「誰から?渡辺さん?」
彼は口に焼き鳥を運ぶ。
「うん、ごめんね、ご飯中に。」
「いや、いいよ。居酒屋にしなくてよかったね。」
「そうだね。」
私は微笑む。
4人席の個室。
私達はグレーのソファに向かい合わせで座りながら、頼んだ焼き鳥やら、サラダやらお肉やらを食べている。
メニューも価格も手頃なものなのに、雰囲気は落ち着いていて、ゆっくり食事をとることができる。初めて来たのだけれど、また来ようと彼と話していたところだった。
「また渡辺さんと仕事してんだね。」
「うん。」
直人と一緒に仕事をしたとき、渡辺先輩とも同時進行にお仕事をさせていただいていた。
「覚えてたんだ、渡辺先輩とちょっとしか話したことないのに。」
「もちろん。ライバルはちゃんと見張っとかないと。
渡辺さん、かっこいいし。」
ハハハと彼が笑う。
そういえば、彼と知り合ったばかりの時に、
「渡辺さんと付き合ってるんですか?」
そう聞いてきたことがあったっけ―――。
あの時は特に何も思わなかったけど、こうしてみると、彼はあの時から私の事思ってくれていたのかな。
「まあ渡辺先輩、人気あるけど……ライバル扱いしてたんだ。」
クスクス笑う。