マルチな彼女に首ったけ!

☆秋川ひとみ side

フリータイムで数人の男性から声を掛けられたけど、一番楽しく話せたのは篠原さんだった。
話の途中で他の女性が入ってきたので、もう少し話したかったかなとも思う。
彼と話すのは、楽チンで心地良かった。

今度店に買い物に来た時にでも、話し掛けて見ようかなと思う。
もう、知り合いになったんだから変じゃないよね?

双子の姉妹が携帯の番号を聞いていたけど、タイミングが悪かったのか、教えたくなかったのか、うやむやになっていたなと思う。

私も交換したかったけど、迷惑なのかもと思うと聞きずらいし。

フリータイムも終わり、ビンゴが始まった。
女性向けの景品には数字が添付されているらしく、その番号札を持っている男性とペアになり、最後に二人三脚競走があるらしい。

身長の低い私は歩幅も狭く、二人三脚は憂鬱になる。
折角のビンゴも気が重かった。

中間位の順位でビンゴが揃い、景品をもらう。

開けて見ると、町に数件あるスナックバー共通で使える商品券だった。
町コン実行委員会発行となっているので、今回の為に作ったものだろう。
この券を使って、カップルで行って下さいと言う事だろう。

商品券の入っていた封筒の裏に数字が付いてた。
No.9
どの人だろう?
名簿の順番じゃないよね?

考え事をしているうちに、ビンゴが終了していた。

係の人が、1番のペアから順に呼び出している。

あ、9番だ。私だ。

前に出て行くと、No.9を持つ男性は篠原さんだった。

二人で宜しくと言い合い、私の右足と、彼の左足を紐で結んだ。

「外側の足から出ますよ。イッチ、ニ、イッチ、ニ、で行きます!」

篠原さんはそう言うと左手で私の肩を軽く抱き、数歩進んでウォーミングアップする。

身長が違い過ぎるのが心配だったが、彼ならば安心出来そうな気がした。

係の合図と共に、10組のペアが一斉にスタートする。
とにかく夢中で足を動かした。
彼の掛け声が実にリズミカルで、どこまでも走って行けそうに思えた。





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