マルチな彼女に首ったけ!

☆秋川ひとみside

「はい………。え?秋川さん?」

かすれた声で話し、目を丸くしている。

「あ、こんばんは。起こしてしまいましたか?

飲物とかいるかなと思って、差し入れにきました。

何か食べました?

薬はあります?

熱は?

病院は?」


「あ、えっと………。有り難うございます。」

「熱ありそうですね。測りました?」

「………。いえ。」

「体温計無いんですね。私、持ってきました。

とりあえず、お邪魔させて下さい。
中で話しましょう。

お邪魔します。」


戸惑っている彼を差し置いて、さっさと中に上がり込んでしまった。


私の部屋とほぼ同じ造りだったが、置いている家具で雰囲気がまったく違う。

彼をソファーに座らせると体温計を渡し、脇の下にはさませる。

ちょっと失礼しますね、と言っておでこと首の後ろに手を当てた。

かなり熱く感じられる。

飲んで下さいと、スポーツドリンクのキャップをはずし、手渡した。


喉が渇いていたのか、半分程が一気に消えてしまう。


体温計の音が鳴って、取り出して見ると、39度もあった。

「寒気はありますか?」

そう良いながら彼の掌に触る。
まだ、冷たい。
汗もかいてない。

「少し………」

「いつから辛くなりました?」

「昨夜急にかな」

「病院は?薬、飲みました?」

「行ってない、飲んでない。」

「………インフルエンザかもしれないから、病院行きましょう!保険証はどこですか?」

「財布に入っていた筈………」

「車の鍵取ってきますから、行ける準備して待ってて下さい。」

そう言い、慌てて自分の部屋に戻り、時間外になるので病院に電話をかけ、車の鍵を持って迎えに行く。

彼は、玄関の外でドアにもたれかかる様にして立って待っていた。

随分と辛そうだったが、何とか歩かせ、病院に行ってくる。

診断はやはり、インフルエンザだった。




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