マルチな彼女に首ったけ!

☆秋川ひとみ side

正直、町コンなんて面倒臭い。しかし、参加する事になってしまった以上、持っている服の中で一番好きなものを着て、ナチュラルだけどバッチリなメイクをした。

会場である町の公民館に行くと、受付で参加者名簿を渡された。
男女10名の氏名がプリントされている。顔と名前が一致するのは、その内の半数位だろうか。

指定された席に付き、机を挟んだ正面に座った異性と5分程自己紹介タイムとなった。

氏名や年齢、職場等を話すとあっと言う間に隣と交代になる。
一人5分と言っても、10人もいれば気がつけば一時間が過ぎようとしていた。

紙にメモしながら話しているので、正直、前半の方はもう、おぼろげにしか一致してなかった。

「篠原慎です。町役場の住民課で働いています。4月に隣町から転勤して来ました。秋川さんの事はスーパーマーケットで時々お見かけしてたんですよ。」

最後の10人目は、座っているから良く分からないが、背の高い男性だった。

「秋川ひとみです。そうなんですか。ご免なさい、ちょっと記憶になくて。」

最近レジに立っていないので、覚えていなかった。

「私は24歳ですけど、篠原さんは何歳なんですか?」
女性に年齢は聞きずらいだろうと、私から聞く。

「自分は、27歳です。来月で28歳ですけどね。」

「そうなんですか。私は再来月で25歳です。8月18日なんです。」

「自分は7月31日ですよ。」

この人と話すのは意外と心地良い。

「あの、趣味は………」

もっと話そうとすると、時間終了の合図があった。
5分はとても短いと気付かされる。
< 7 / 32 >

この作品をシェア

pagetop