【B】きみのとなり

3.動き出す時間  -氷夢華-



クリスマスイヴ、兄貴がアタシにプロポーズしてくれた。



ホテルで食事をして、そのままホテルで宿泊して、
体を重ねながら朝を迎えたアタシは幸せだった。


朝食のルームサービスの後、ホテルのデスクで緊張しながらアタシの名前を書き込んだ婚姻届。
そしてチェックアウトして、提出したクリスマスの婚姻届。


兄貴がくれた人生最高のクリスマスプレゼント。
その日、アタシは橘高氷夢華から晴れて安田氷夢華になった。



兄貴と二人、その足でアタシの実家へと顔を出すと、
オトンもオカンも、『幸せになりなさい』っと祝福してくれた。


そして目の前に広げられる、結婚式のカタログ。



「嵩継君、結婚式の日取りはどうする?」

「えっと……結婚式は……」



オトンに突然、ふられた兄貴はカタログを見ながら黙り込む。

ったく、兄貴のことだからプロポーズと入籍のことだけで頭がいっぱいで、
その先なんて考えられなかったんでしょ。

もう、仕方ないなぁ。
助け舟出してやるか……。



「お父さん、結婚式なんだけど六月じゃダメかな?

 ほらっ、六月ってジューンブライドだし、
 それに兄貴の誕生日があるから……。

 時の記念日に結婚式って、なんかロマンチックじゃん」


そういってアタシは、兄貴にも笑いかけた。


「六月か……。嵩継君も、それでいいかね」

「はい」


オトンの言葉に、兄貴は今度はしっかりと頷いた。



本格的に準備が動き出したのは年始明け。
その日から『結婚式』を意識して時間が許す限り慌ただしい時間が始まる。




何度も何度も話し合って、アタシたちが結婚式をあげる会場は、
ホテルでも神社でもなく、鷹宮の中にある教会だった。



なんで結婚式まで病院の教会かなぁー。


そう思う心もあったけど、
そんな兄貴だから……アタシは兄貴に恋をした。



結婚式は病院の中の鷹宮の教会。

披露宴と言う名のパーティーはケアセンターの中庭。

パーティーでの食事を準備してくれるのは、
海兄のお店と兄貴がずっとお世話になってた居酒屋さんのご夫婦と決まった。

< 117 / 149 >

この作品をシェア

pagetop