【完】さらば憧れのブルー
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雄兄と美由紀さんを見送るため、運転免許を取ったばかりの一紀の車で空港へと向かった。
後ろの席に座っていた美由紀さんは、一紀の運転を心配そうに見つめながら、「ブレーキが遅い」だの、「今曲がれたのに!」とかブーブー文句を言っていた。
その横で雄兄が、「まあまあ集中させてあげなよ」と、美由紀さんの言葉にうまくストップをかけていた。
一紀は、そんなことはお見通しとばかりに、こっそり耳に耳栓をしていて、私はそれを横の助手席で見ながら笑いを堪えていた。
さすが姉弟だなと、二人の仲の良さを改めて感じた。
空港に着くとまだ時間があった。
「雄太郎さん、時間あるから二人で男の話しませんか?」
一紀が唐突にそんなことを言うもんだから、「あんた何考えてるの?」と美由紀さんが疑うような目で一紀をにらんだ。
「姉ちゃんと一緒に暮らす上での注意事項を話に行くんだよ。行きましょ、雄太郎さん」
一紀は空港のソファーに座っていた雄兄を無理に立たせて、ぐいぐいと引っ張っていってしまった。
一紀は雄兄を引っ張りながら、私にアイコンタクトをした。
「美由紀さん、ごめんなさい。実は、私が一紀に頼んだんです。美由紀さんと話がしたいって」
「え?そうなの?」
「はい……」
私の真剣な空気を感じたのか、美由紀さんが私に向き直るようにして座り直した。