クリア・スカイ

 日が暮れる前に三人は家に帰った。家に帰るとほたるはすぐに、母親に授業参観のプリントを見せようとした。


「ママ、これ――」

「――私は旅館の仕事で忙しいの。学校のことはパパか優子さんに話しておいて」

 母親はやっぱりほたるを冷たくあしらった。プリントを受け取らず、ほたるの言葉すら待たずに、目の前に厚い壁を作り上げる。


「そうだよね、分かった。優子さんに話してみる」

 ほたるはすぐに母親から離れ、二階にある自分の部屋へと駆け込んだ。勉強机の上に捨てるように置かれたプリント。両手で持っていた部分は、手に力が入っていたのかぐっしゃりとしている。


「やっぱり今日も、ママとうまく話せなかったなぁ」

 ほたるの独り言は、真っ暗な天井に吸い込まれるようにして消えた。
 そして、今日も彼女は、周りに聞こえないように泣くんだ。
< 142 / 318 >

この作品をシェア

pagetop