クリア・スカイ

「旅館の手伝い? どうして?」

「前に優子さん言っていたでしょ。ママは忙しくて時間がないって。だからほたるも旅館を手伝えば、少しはママの役に立つかなって」

「…………うん、そうね。女将だけじゃなく、ほたるちゃんが手伝ってくれたら皆が喜ぶと思うよ」

「ホント? じゃあ、優子さんからママに話してもらえないかな? ママはほたるの話を聞いてくれないから」

 僕は優子さんの目が赤いことに気づいていた。また、健気なほたるに言えないことがあるということも知っている。

 ほたるが旅館を手伝ったくらいで、母親の心には何も響いてこないだろう。いまさら何も変わらない。それは石ころの僕からみても一目瞭然だ。

 たぶん、その現実に気づいていないのは、ほたるだけだと思う。

 
< 152 / 318 >

この作品をシェア

pagetop