デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
「死に損なったな、バカ」

心底バカにしたような声で、おもむろにアスナイがシュリに言った。

「いーんだよ、桜と夢を見れただけでも万々歳だぜ」

へっ、と肩をすくめて見せる。

「お前にゃ出来ねーだろ。あれこれ小難しく考えるから」

「するわけないだろ、マトモな脳みそ持ってれば」

桜に話した言葉の片鱗も見せず、フンと鼻を鳴らした。

「……それに、俺はそんな短い夢で終わるようなバカなことに、自分の命は賭けない」

静かに言う。

そして、にやっと笑って二人を見た。

「桜。俺はこいつと違って王都武官のままだからな。いつかは王都に帰る。お前のそばに、ずっと居続けてやるからな」

「げっ…」
「アスナイさん……」

「こいつによると、俺はサディストらしいからな。ならそれらしく……ずーっとお前を見ててやる」

最後の一言を、小さく苦笑いして。

「………」

シュリに向かって、アスナイは言う。

「俺はお前みたいに夢を見たりしない。現実に、桜のそばにずっといられるほうがいい」

「フン……そうかよ。女々しいやつ」

「人さらいに言われたくない。お前だって未練タラタラだろうが」
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