デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
堀には大きな橋がかかっていて、見張りが数人立っている。
丁度かがり火が入る時間だったようで、松明を持った者が数人、慌ただしく走り回っていた。

『王宮の門です。下馬なされよ』

橋の入り口に立っていた見張りが、無表情に呼ばわった。

二人はもう慣れたもので、言われる前に王都武官の紋章を見せた。

『……確かに。して、そのフードをかぶった者は何者です』

職務に忠実な見張りの兵士は、桜に目線を移して聞いた。

『【神告】を受けて我らが迎えに行った、王の客だ。訳あって顔は出せない。このまま通せ』

アスナイが有無を言わせない口調で言う。

騒ぎになると、面倒だ。

『しかし――』

初めて戸惑うような表情を見せる兵士に、

『心配すんな。こいつは怪しい奴じゃねえよ。何かあったら俺らが責任取るからよ、な』

シュリがポンポンと彼の肩を叩き、ニカッと笑ってさっさと中へ入っていった。

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