デブスの不思議な旅 ~恋と変と狂愛?と~
『魔』の襲来の件は気がかりだったが、王は全く慌てる様子を見せなかったので、桜は彼を信じて見守ることにした。

(私が騒いでも迷惑かけるだけだし、なにより王様がこんなに余裕だし)

そんな桜の心情を分かっているかのように、そっと桜の前に腕を回した。そして静かに苦笑いする。

「そなたの心を得ることに比べたら、あんな蛮族の相手など、大した難事ではない」

桜は首をかしげた。

「……そんなことないと思いますけど。私だって、いたって普通の人間ですよ。贈り物をされたらそりゃ嬉しいし、王様みたいな美人さんに優しくされたら舞い上がっちゃいます」

「そうなのか?」

少し元気がでたのか、桜の顔をのぞき込む。

「……行き過ぎは困りますけどね。あと何にしてもそれを盾にして、何でも言うこと聞けって言われるのが嫌なだけです。だったら何もいらないって思う……普通だと思うけどなあ」

「………」

全く参考にならない。

優しくされたり、贈り物をされるのは嬉しい、だがやり過ぎは嫌。
そして命令されるくらいなら、はなから何もいらない。

自分の周りの人間とは全く違う価値観だ。

「………やっぱり、そなたのほうがずっと難しい」

王はボヤいた。
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