愛されたい、だけなのに







本当に、何も気にすることないんだ。



「まぁ、とりあえず専門学校を卒業しないと、先に進めないけど」


柳先生は、前に進んでいる。


「…櫻井?」


再び歩き出した柳先生に、立ち止まったままの私は腕を引っ張られる。



動かない私に、柳先生は顔を覗き込んでくる。






「柳先生」

近距離で目を合わせた。

「ん?…てか、もう先生じゃないけど」

「あ…そっか…えーと…」

ついクセで、先生て呼んでしまう。


「圭吾でいいよ。皆、呼び捨てだったし」

「えぇ!?」

呼び捨てだなんて…

柳さん。だと、お母さんもそうだしー…


じゃあー…




ドキドキ。


「…圭吾くん」


「はい?」


ふっと笑った、圭吾くん。



ドキドキ。


下の名前を呼んだだけなのに、ドキドキする。




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