結婚も2度目だからこそ!
彼女を先に帰らせ、圭悟と二人きりになる。

圭悟は離婚届を見つめたまま、動かなかった。


「……ねえ、早く書いてよ。いつまでそうやって見ているつもり?」

痺れを切らして、私はそう圭悟に話した。

「こんなに謝っても、ダメなのか?」

「ダメに決まってるでしょ。もう圭悟の顔を見ても嫌悪感しかない」

「ちょっとした出来心だったんだ。もう絶対にしないから」

「その出来心が、今まで積み上げてきたものをぶち壊したのよね。出来心って怖いわぁ」

いまさら何を言うか、と思う。

"絶対に幸せにする"って言ってたその、"絶対"がたった三ヶ月で無くなっちゃったんだから、その言葉を信用できる訳ないじゃない。

「……ごめん」

「謝罪の言葉はもういいから、早く書いてよ」

吐き捨てるようにそう圭悟に言うと、圭悟は諦めたのかテーブルに置いたペンを取って空欄を埋め始めた。

手が小刻みに震えていて、名前がミミズのようになっている。
それを見た時、婚姻届を二人で書いた、あの日を思い出した。


……そう言えばあの時も、圭悟は記入するのに緊張して、同じようにミミズみたいな文字になっていたっけ。

その文字を見て、私がつい笑っちゃって、圭悟は恥ずかしそうに顔を赤らめて『一生に一度しか書かないものだから緊張するのは当たり前だろ!』って言ってて。

そんな圭悟が可愛いと思って、ゴメンって言いながら抱きしめて……。


幸せに満ち溢れていたあの時を思い出してしまったら、ふいに涙が溢れた。

や、やだ。泣かないって決めてたのに。
圭悟の前でだけは、もう二度と泣かないと決めてここに来たのに。
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