結婚も2度目だからこそ!
***

土曜日。
朝から部屋の荷物を、智樹のマンションへと運んだ。


衣類といくつかの衣装ケースにカラーボックス、そして化粧道具や飾っていた雑貨。
思ったよりも荷物自体はそんなに多くはなくて、智樹の車に一回で全部収まった。

母には『もう戻って来ないよね?』と念を押され、智樹は『そうならないように、努力します』と自信満々に言う。

父も母もそんな智樹の言葉に安心したみたいで、笑顔で見送ってくれた。


マンションへと着き、持ってきた荷物を収納する。

智樹の服だけが掛かったクローゼットに、私の服が掛かったのを見て、なんか妙にドキドキしたりして。
殺風景な部屋の中に、少しずつ私の色が加わる。

男の人と一緒に住むのは初めてじゃないのに。
どうしてこうもワクワクしちゃうんだろう。


「ある程度片付いた?」

「うん、大体ね」

「じゃあ、食器とか買いに行こうか。せっかく一緒に住み始めるし、せめて食器くらいは新しいの買おうよ」

「え?食器?」

「お揃いのとか、さ。憧れるじゃん」

智樹は恥ずかしそうに顔を赤らめながら言った。
そんな智樹が可愛くて、思わず笑みが零れてしまう。


そうして私達は車でホームセンターへ。

お揃いの食器の他に、柔軟剤や洗剤、トイレットペーパーだったり。

一人暮らしではさほどストックしておく必要もないけど、二人だと無くなるのも早いからって、色々と買い込んだ。

ふたりとも両手いっぱいに袋を抱えて、車まで戻る。

車に乗せた荷物を見て、少し買いすぎたかなって言ったりして。
何気ないことなんだけど、そんな会話を智樹と出来ることが幸せで仕方なかった。


智樹との穏やかな生活がこれからずっと続くんだと、……そう思っていたのに。


私の携帯がぶるる、と震えていたのを、智樹と楽しく話をしていて気付かなかった。



――ディスプレイには、『非通知』の文字。


それに気付いたのは、ある程度落ち着いた夜になってからだった。

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