結婚も2度目だからこそ!

それから何日か経ち、仕事が終わって家へ帰る途中、電話がぶるる、と震えた。


どくりと心臓が鳴る。


まさか、と恐る恐る携帯を見ると、ディスプレイには沙織の名前が表示されていた。

ホッとして通話のボタンを押す。


『おひさー!あのさ、今度の土曜日飲みに行かない?あれからどうなったのか話聞きたくて、有希とうずうずしてたのさ』

「久しぶりだね!土曜日?あ、智樹練習でいないから行けると思う!いいよ~。いつもの時間にいつもの居酒屋の前でオッケー?」

『うん、それで!ってか名前呼び捨てで呼んでる~!さてはかなり進展あったね?詳しくはその時聞くから覚悟してて』

「あはは、了解~。じゃあ土曜日ね」


そう約束をして、電話を切った。


最近は携帯が震えるたびに、過剰に反応してしまう。
あれからたまらず非通知も着信拒否の設定にしたけれど、それでもまだ安心は出来なかった。


最近の私は、周りにビクビクしながら生活しているような気がする。

どこかに圭悟がいるんじゃないか、とか、またあの女と会ってしまうんじゃないか、とか。
外をひとりで歩くのがとても怖かった。

もちろん智樹はそれを心配して、朝は一緒に車で会社に行ってくれたり、可能な限り守ってくれる。

でも帰りはどうしても一緒には帰れなくて、ひとり家まで帰るのだけど、その時間がとても不安で不安で仕方なかった。

非通知の事があってからは、余計その不安が強くなり……。

でもこれ以上、智樹には負担をかけさせたくないから。


だからこそ、沙織の電話はとてもありがたかった。

智樹に話せば、何とかしようと智樹自身が行動してしまう。
だけど、沙織たちなら話を聞いて助言してくれる。

話を聞いてくれるだけでいい。
それだけで、きっとその不安は和らぐはず。

< 84 / 127 >

この作品をシェア

pagetop